かがり屋はサンゴ草群落の目と鼻の先に建つ旅館です。(奥に見えるのがサンゴ草群落地です)
昭和43年、能取湖荘としてこの地に開業以来、私はずうーっとサンゴ草を見続けてきました。その年年によって、色づきのスピードも広がりも違います。
色づきはじめはいつもお盆明けです。緑色の何の変哲もない草原が、ある日、ちよっとだけ変化したのに気づかされます。さらに、1日1日と日を重ねるうちに、いつのまにと思う位湖畔全体が赤みを帯びて来ます。
それは、劇的と言っていい変わりようです。上から俯瞰すると、まるで絵の具を絞り出して塗りまくったように緑を赤が席巻してゆきます。やがて、燃え立つような赤色が溢れるように、広がる野火のように一帯を埋め尽くすのです。
ピークは、一時、です。
霜が降りる9月末から10月にかけてのある日、終わりの時を迎えるまで私は、恋人の心を読むように、はらはらしながら見守っているのです。